未来の臨床試験 - 第十話 ロック、RPAの真似をする

2024年8月31日(2020年12月16日初出)

「うーん、やばい。これはやばいよ」
「さくら、どうした?変なものでも食べたか?」
「あんた何言ってんのよ」
「さっきから机に向かってうーんうーん唸ってるからお腹を壊したのかと心配した。念のため体温測るか?」
「そういうことじゃないのよ」

ロックが私の周りで何かしたそうにそわそわしているが、今はロックの相手をしている暇はない。先週の文化祭で集めた300枚のアンケートを集計しないといけないのだけど、明日締め切りというのをすっかり忘れていて、もうあと2時間で明日になってしまう。どうしよう。

「さくら大丈夫か?」
「うるさいわね。明日学校に持っていくアンケートの集計をすっかり忘れてたのよ」
「ロック手伝う。ロック完璧」
「何言ってんの?あんた治験の手伝いのためのロボットでしょ」
「アンケート読み込む。ロック処理する。1枚3秒」
「1枚3秒?あんた何言ってんの?」
「ロックのカメラでアンケート読み込む。1枚3秒。グラフ作っておしまい。全部で28分30秒」

今からパソコンに打ち込んでたら徹夜しても間に合わないか。仕方ないロックに頼もう。
「ロック、じゃぁこれをお願い」
「さくら、どのデータとどのデータが必要かロックに教える。あとはロックが自分でやる」
「えーと、この質問1っていうのから順番に読み込んで、質問10まで読み込んだら次のアンケートに移る、を繰り返すのよ」
「ロック分かった。さくら28分30秒待つ。その前にRPAアプリのダウンロードする」

ロックはしばらくおとなしくしていたかと思ったら、その後はものすごい勢いでアンケート用紙をめくり始めた。
「アンケート集計完了。データはさくらのパソコンに保存完了」
「え?はやっ」

疑いながらもPCを開いてロックの作ったファイルを開けてみた。なんと、データの一覧と質問毎のグラフが奇麗に表示されたではないか。
「ロックありがとう。助かった」
「ロック天才。ロック天才」
「ところでロック、どうやって私のパソコンにデータを保存したの?」
「さくらのパスワード簡単、解読に成功」

しまった。ロックにパスワードを破られた。家のパソコンだからって簡単なパスワードにしておいたのがいけなかったか。でも今回ばかりはロックを叱ることは出来ないな、次から気を付けないと。